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神戸家庭裁判所 昭和38年(少ハ)2号 決定 1963年5月01日

少年 K子(昭一九・一・二〇生)

主文

少年を昭和三九年四月三〇日まで特別少年院に戻して収容する。

理由

少年は、昭和三六年五月一二日神戸家庭裁判所において、ぐ犯窃盗保護事件により中等少年院に送致する旨の決定を受けたことにより同年同月一六日交野女子学院へ収容されたが同三七年九月一〇日仮退院を許されその帰住地を所管する神戸保護観察所の保護観察所の保護観察に付されるに至つたものであるところその際遵守すべき事項として

(1)  一定の住居に居住し正業に従事する、特に神戸市生田区○○丁目△△番地父○原○次の許に帰住して家出、放浪をしないこと。

(2)  善行を保持する、特に不純な異性交遊をしない、またタバコやビールを口にしないこと。

(3)  犯罪性ある者又は素行不良の者と交際しない、特に不良の女友達とは一切交際をやめること。

(4)  住居を転じるなどのときは、あらかじめ保護観察を行う者の許可を受けたうえですること。

などのことが定められそれに従うことを誓約した。(なおもしこれにそむいたときは仮退院を取消され少年院に戻されても異存はない旨附言した。)

しかしてその頃少年は、前記父方に帰住したものの、

(イ)  同年同月一五日無断で前記父の許から家出し、密かに以前より交際のあつたYと共に同人の知合いH方(神戸市葺合区○○町△△荘)に同居するに至り、その後同市内噸茶店に住込んだり右Hの引越先同市長田区西代通りの会社寮や市内の旅館を転々としたりなどしながらYと不純異性交遊を続けていた。

その間、同月一八日から再三にわたり前記父の家から兄所有の背広や姉所有の衣類、カメラなどを持出し入質したばかりでなく同月二八日(あるいは二九日)頃前記父の家の階下を間借している大○○司所有のカメラ、腕時計各一ケ(時価四万千余円位)を盗み取つた。

(ロ)  然るにその後、前記大○所有物の窃盗事件により逮捕されて家庭裁判所に送致され再起(三八少二一〇〇号)前の(三七少五六八七号事件であるが後記の如く所在不明により審判不開始となつたもの)審理のうえ同年一二月二五日いわゆる試験観察となり京都市所在白光荘へ補導を委託されたにもかかわらず同月二八日無断で退去し翌三八年一月一日一旦前記父の許に帰来し翌一月二日またまた父の金四、〇〇〇円を持つて家出し、行方をくらますに至つた。しかも密かに帰宅し同月一五日頃姉所有の衣類数点を、また同月末頃父などの衣類や兄所有のステレオを持ち出したり翌二月中にも数回、父親の洋服より現金を抜き取つたりなどした。

(ハ)  以上のように経過しているうち妊娠していることが判り密かに同年三月七日頃尼崎市内の病院で中絶手術をしたものであるがそのため交友する不良性のある者らからこれが費用七、〇〇〇円を借用調達し、またその後同市内喫茶店△△に住込んだりしていたようである。

(ニ)  然るに保護観察官が同年三月下旬偶然少年と出会したことにより引致取調べをしたところ就職先きをさがしているというので結局同月二八日神戸市生田区内で喫茶店経営をする保護司大野明方へ住込んで働くように斡旋し補導を委託したが四月七日無断で右大島方を出て行方を暗ましてダンスホールで知り合つたN(一八歳位)と同月九日頃から数回にわたり市内の旅館に同宿し不純異性交遊に耽るなど放浪していたのを同年四月一五日引致された。それらの際右大島方での同僚M子外一名から借用していたスーツ上衣、時計を入質し、また右Nから「お市」旅館で借受けていたものであるカーデガンを同月一五日頃無断で入質したりした。

ものである。

以上の各事実(大○所有物盗取の点も含む)は近畿地方更生保護委員会の少年に対する戻し収容申請書及び附属書類、少年の窃盗保護事件記録、少年調査記録、審判廷における少年及び保護者や保護観察官の各陳述などを綜合すると認められ、いづれも前示遵守すべき(1)、(2)、(3)、(4)号(但し(ロ)について(2)号を除く)の事項を遵守しなかつたときに該り再犯の虞があるというべきであるばかりでなく大○所有物盗取の点の如きは既に刑法第二三五条に該る犯罪行為である。

このような劣悪な情況に在る少年であるが少年調査記録に現われるように少年が未だ人格的に熟していないものがありそのため生活態度に安易、無計画な面がある、それに強い自己中心性や我ままで負けず嫌いでもあることからの対人関係の不調和なども作用し家出、放浪、ぐ犯行動(その内犯罪に達したものもある)となるに至つたもののように思われる。それ故それらの点につき少年として、今一度矯正を図り改善を期するが相当であり窃盗保護事件においては、特別少年院送致によりこれが処遇に当らせるを妥当とすると認められることも考量し結局少年を特別少年院へ戻して収容すべきものとする(尤もこの場合交野女子学院職員の意見に現われるような精神病質の疑があるため集団処遇に非常な困難があり個別処遇が適切ならば医療少年院へ移送されるよう望むものであることを念のため申添えます)。

よつて犯罪者予防更生法第四三条一項に則り主文のとおり決定をする。

(裁判官 太田元)

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